ドラマ「それでも、生きてゆく」を一気観
季節ごとに気分の揺らぎを感じるのは、やはり日本人特有の感傷なのだろうか。それともどの民族にも当てはまる感情なのだろうか。
2015年まで足掛け3年ほど東南アジアで生活して思ったのは、やはり季節がくっきり別れるエリアに特徴的な感情ではないか、ということだ。雨季から乾期の変わり目で四季の切り替えのような感傷は生まれづらい。ミス・サイゴンでは昼と夜の違いをうまく取り入れていたけど。特に雨季の午後からのスコールと夕方からのサイゴン川からの涼しい川風。そしてサイゴン市内の夜の生気に満ちた艶かしい雰囲気。。。
っと話を戻すと、2011年7月〜9月放送のこのドラマを見逃していた自分に、もったいないことをしたものだと言い聞かせている。もともと夏といえばサマーウォーズというのが最近の自分のもっぱらのルーティーンだったのだが、たまたまCSで一気観したこの作品で、もう一つ夏のルーティンを追加できた感が半端ない。ライブラリーにまた一本追加できる。得した気分だ。
物語は脚本家の坂元裕二による書き下ろしのオリジナルストーリー。犯罪者の加害者と被害者の家族に焦点を当てた物語だ。主演は瑛太と満島ひかり。そして脇役陣がいい。特に瑛太の母親役の大竹しのぶと、満島の母親役の風吹ジュン。これだけでも観る価値があるが、今回はジャニーズジュニアの風間俊介のサイコパスぶりがポイントになっている。本当に効いているな〜。
そして何よりも特筆すべきは背景となる季節が夏であり、本当に美しい自然の風景だ。その風景の中で少女が殺害され湖に遺棄される事件のその後が描かれている。物語の途中に現れる伏線の日向夏の使い方も、まるで梶井基次郎の小説「檸檬」や中上健次の小説「枯木灘」の中の夏芙蓉のように五感に訴える花として「ひなげし」を伏線に使い、事件の核心へのトリガーにも使っている。夏目漱石の虞美人草(ひなげし)とは違うが、その名前の由来である中国の言い伝え、虞妃(虞美人)が自害した後にひなげしの花がさいた、からの暗喩はあるかもしれない。これは読みすぎかな。。
6月の花なので初夏の花。この花が、湖が、夏の新緑が全てを見ていたわけだ。
そしてオープニングからエンディングまでをいろどる小田和正の主題歌と辻井伸行のピュアなピアノ。そこに全体をカバーする蝉の声。静かな湖の湖面。なかなかこのバランスのドラマには巡り会えない。
ストーリーの巧みさに、すぐに原作小説をググったのだが、脚本家のオリジナルルトーリー。殺人事件の家族物は初めてではないのに、なんでだろう、すごく新鮮だ。第一話から毎話かまされる瑛太と満島の掛け合いが、好演出も相まって独特のドラマのリズムを作り出している。シリアスな場面の多いストーリー展開において、本当に独特の荒らし方をしているのが、オリジナル脚本ならではだ。わざと少し外した掛け合いで、それを受けた演出。そしてきっちり演じきる瑛太も満島ひかりも、気迫が違う。特に満島ひかりは肝っ玉の座りっぷりが半端なく、大竹しのぶとがっぷり四つ。演技に何度も鳥肌がたった。
もちろん泣きのシーンでは、がっつり呼ばれなき出来ます。
あ、「呼ばれ泣き」は「もらい泣き」とはちょっと違い、ドラマに引き込まれて向こう側に行って一緒に泣ける泣き、を表現するために区別しています。
久しぶりにじっくり涙腺を絞れたドラマ。おすすめできます。
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やっぱ、夏といえば最近はこれ
これだけで1本レビューできる名作中の名作、再演しないかな〜
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