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Consideration of an office worker living in Tokyo

仮名手本忠臣蔵第三部を年の瀬に国立劇場でみる

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若干中途半端に成ってしまうが、仮名手本忠臣蔵の第三部を12月に見ることができた。11月の第二部は残念ながら叶わなかったが、10月の第一部と合わせて楽しませてもらった。第一部が浅野切腹までで、第二部は葛藤を描き、第三部でいよいよ討ち入りのクライマックス。
 
この三部は大星こと大石が暮らす山科まで母娘が旅する八段目から始まる。
大星由良之助のせがれ力也と許婚(いいなずけ)だった加古川本蔵の娘小浪が、お家お取り潰しで婚儀が流れ悲しむのを見て、母戸無瀬がもう一度力也に頼もうと、鎌倉から山科へ向かうシーン。
富士を背景に旅道中が描かれている。
 
九段目は京山科の大星由良之助の閑居、山科の雪転がし。
おなじみの、隠密への目くらましのため遊び三昧で酒でへべれけになった由良之助が家に帰ってくるシーンから始まる。史実では元禄時代は雪が多かったそうだが、京都でも結構降ったのだろう。酔った由良之助は帰りがてら従者に雪だるまを作らせながら花道から参上し家に帰る。
 
しばらくして八段目の力也許婚だった小浪と母戸無瀬が到着。戸無瀬はこの場で祝言してくれと覚悟の談判。いざとなったら女は強い。だめならこの場で死にますっ。って、歌舞伎だからまあ有りか。でもって応対した由良之助の妻お石が結婚するなら加古川本蔵の首を引き出物に欲しいと三方を差し出すと家の表にいた虚無僧が入ってきて「ふざけるな」と三方を足で踏み潰してしまう。その虚無僧は加古川本蔵本人というオチ。
 
なぜお石が結婚ならぬというのかなんだけど、殿中での刃傷の際、浅野を羽交い締めにして吉良に止めをささせなかったのがこの加古川本蔵。お家お取り潰しになるのならせめて吉良に止めをささせたかったというのもわかる。てな感じで本蔵とお石が真剣で斬り合いの喧嘩になるもあっさりお石が追い詰められたところで、力也が現れ本蔵の脇腹を一突き。そのあといよいよ由良之助参上。第一部の刃傷のことの次第がここで語られる。こちらは劇場でお楽しみだ。そしてお引き物だと本蔵は吉良邸の絵図面を差し出してこときれる。
 
十段は、堺での最後の準備のシーンだ。このシーンは人気がなかったらしく上演は珍しいらしい。討ち入り道具の問屋での顛末なのだが、最後に情報が漏れないかを試すシーンだ。
 
11段。最後の討ち入りのシーンは圧巻だ。幕が開いて四十七士が現れると、観客から拍手喝采。
場面代わり、吉良邸に入ってからはまさしく一気に進む。テンポがいい。
 
今回は浄瑠璃の花水橋引き上げの場がある。吉良の首を掲げて泉岳寺に向かうシーンで若狭之助に出会うシーンでもう一度一同の自己紹介。このシーンは省略される事もあるのだが、三部構成とあって普段省略されるシーンもきっちり演じられるのがいい。
大星が花道を去っていき幕だ。
 
様々な形で散々見ているのでストーリーはこびりついているのだが、やっぱりいい。こういった忠義の話はヨーロッパでも時々見かけるが、散り際の鮮やかさはいまだ忠臣蔵を超えるものに出会っていない。日本独特の物語なのだろう。
 
第三部は26日まで。年の瀬に日本を噛みしめるのも一興です。